カスタマーセルフサービスとは、FAQやコミュニティサイトによって、顧客が企業の窓口に問い合わせることなく、問題の自己解決を促す仕組みです。
現代のカスタマーサービスにおいては、セルフサービスの提供が不可欠です。技術や機能の実現により、顧客は望むサービスを受けることができ、企業はサービスを提供することができます。AI技術が効果的に使用されているなら、顧客との前後関係を維持する独創的なサービスを提供できるようになり、ビジネス競争に優位になります。企業はすでに構築してきたCRMを用いて経費を削減できます。
しかし言うまでもなく、これは最も理想的なものです。
カスタマーセルフサービスは、サポート提供コストを下げる以上のことをするので、非常に注目されています。異なるプラットフォーム間のやり取りから収集された情報にアクセスすることで、顧客の期待に応え、超えていくことが可能になります。高性能デバイスやデータ分析ツールの普及と共に、セルフサービスのナレッジベースやシステムは、AIと同じく、この分野での発達における重要な役割を果たしています。
正しく構築された、ユーザーフレンドリーなセルフサービスは、企業や顧客にとって明確な利点が多くあります。このサービスを使用する顧客は、いつでも知りたい情報を自分で検索し、迅速なサービスを期待する人です。
しかし、セルフサービスには、限界があります。
問題の緊急性や性質、全体の状態によって、どれほどのセルフサービスを提供できるかが変わってきます。多くの場合において、セルフサービスだけでは、総合的なサポート戦略を提示できません。たとえば、顧客はセルフサービスでサービスプロセスを始めますが、途中で1対1の会話を望むかもしれません。
また、セルフサービスを提供する企業は他のチャネルも利用できることを保証する必要があります。「The Autonomous Customer1」の調査の第3版によると、AvayaとBT Groupは、自主性の上昇と顧客のオムニチャネルへの期待により、近代的なコンタクトセンターへの非常に大きな変化がもたらされていることを証明しています。
オムニチャネルがコンテキストを動かし、コンテキストの認知が未来を動かす
前述のAutonomous Customerによると、鍵となる考えは、顧客が理解できる範囲に応じて、最小限の努力でチャネル間の切り替えができることを望んでいるということです。それぞれの好みや、場所、緊急性に加えて同時に存在する活動、感情、要求の性質などのコンテキスト情報は、顧客の背景を知るうえで重要な役割を果たします。
このコンテキストに基づいてセルフサービスについてより詳しく観察すると、たとえ質の良いセルフサービスオプションがあったとしても、顧客は他のチャネルでもアクセスすることを望むようです。特に最初のチャネルで物事が思い通りにいかないときに、このオプションを高く評価します。
つまり、カスタマーセルフサービスに加えて、自己解決できなかった時の「次の」チャネルを用意しておくことは非常に重要であると言えます。
とは言え、オムニチャネルに対応するのはそれほど簡単なことではありません。鍵は「自動化」です。
セルフサービスがカスタマーサービスの将来であるとはまだ言えない
知識が豊富で、例外的かつ難しい状況に対処できる、よく訓練されたエージェントは、コンタクトセンターの重要な部分であり続けるでしょう。しかし、セルフサービスが出現する以前と同様、このようなエージェントがすべての状況に対処することはもはや求められません。
それほど難しくない決まりきった状況や要求は、セルフサービスやEメール、ソーシャルメディアなどを利用した、自動化プロセスに切り替えることができるので、サービスエージェントには余裕ができ、専門的な知識を必要とするタスクに集中することができます。
AIツールは、顧客の問い合せにコンテキストを付与することができ、前述したような例外的な状況にエージェントが対処するための負荷を軽減し、より早く効果的なルーティングや、迅速な応答時間を可能にします。これはAIがカスタマーサービス環境においてさらに重要になっている方法の一つです。AIは、プロセスを自動化し、セルフラーニングを促し、洞察力を発揮し、前後関係を見出すために役立ちます。
考えてみてください。セルフサービスはカスタマーサービスの未来になり得ますか?一つのことは確かです。まだまだその道のりは長いということです。
現時点で最も必要なのは、適切な時に、適切な仕方でコンテキスト情報を活用できるコンタクトセンターでのAIシステムの不足です
優れたカスタマーセルフサービス:オムニチャネルを活用する
ある報告では、セルフサービスについて肯定的に感じている米国と英国の回答者の割合がわずかに減少していると述べています。一方で、サポートがしっかりとされている場合、セルフサービスが顧客にとって効果的で魅力的な方法であることも示しています。しかし、一部の企業はセルフサービスの顧客やプロセスに適切なサポートを提供しないので、チャネルごとに対応の違いが生じ、顧客をイライラされることになりかねません。顧客のコンテキストに基づいてコールバックやチャット、Eメールなどの付加的なコミュニケーションチャネルを提供することは、サービスエクスペリエンスの成功や顧客満足度向上の鍵です。
ある調査では、回答者のチャネル毎の優先度は、顧客の29%が電話、回答者の23%がEメールで15%がチャットとなっています。 別の言い方をすれば、セルフサービスに注意を集中しすぎて、大切なものまで失うことがないようにしなければなりません。カスタマーサービスでのやり取りや、カスタマージャーニーの設計、顧客とのオムニチャネルコミュニケーションなどの基本は、いまだ重要です。たとえば、回答者の多くは、企業のウェブサイトでその企業の電話番号を見ることを望むようです。
それで、セルフサービスはよくメンテナンスされて、良いUIが提供されている場合には、非常に良い顧客体験を提供しますが、それに頼りすぎて、顧客接点としての様々なチャネルに対応することを忘れないようにしましょう。
チャネルのスムーズな切り替えのためのキーポイントをここにあげます。
- 効率的な検索機能に焦点をあてた、ユーザーフレンドリーなプラットフォームをつくる
- 定期的に情報を更新する
- 他のチャネルのメッセージと一貫性のあるメッセージを、セルフサービスシステムやプラットフォームに作る(できれば自動化)
- ウェブサイトのFAQセクションで顧客の質問に答える
- コスト削減の前に価値を生み出す
- 商品やサービスを中心としたコミュニティを作り出し、それにより顧客の感情を知る
- 様々なチャネルにわたる顧客の問い合せを自動的に追跡するため、異なるチャネルのデータを結びつける