10年ほど前までは、「列に並んで待つ」ことは日常の一部でした。公共サービスや銀行やお店、コンサートやイベントのチケット売り場…並んで待つのは当たり前のことでした。今でも「美味しくてお得なランチのお店」に並ぶことはよく見かける光景です。

ところが、コールセンター に電話をかけて「キュー」に並ぶことを好む人はいません。もちろん、不満やすぐに解決したい問題を抱えているわけなので当然ですが。とはいえ、年々この「待てる」時間は短くなっているように思います。

この顧客側の傾向は、サポートを提供するコールセンター 側にとっても大きな挑戦となっています。デジタルの進歩は新しいビジネスモデルや技術革新を提供してきましたが、一方で顧客から企業へのアプローチの方法を常に変化させてきました。画面をタッチすることで日々の必要が満たされていく世界では、電話待ちの列に並んで待つという行為は時代遅れで、イライラを感じることでしかないのです。

町で一番おいしいアイスクリーム、有名バンドの次のコンサートチケット、友人より先に最新のiPhoneを手に入れること…、人々は列に並ぶことに抵抗を感じません。しかし、日常的な問題に対処するために、列に並んで待とうとは思いません。これは、その人が忍耐強いかどうかという問題ではないのです。

並んで待つのは時代遅れである

コールセンター の待ち時間には、顧客情報がしっかりとチャネル間や部門間で共有されていないことがあります。オムニチャネルを導入しているコールセンター の中で、リアルタイムにチャネル間のDBをマージしているのは47%と言われていますから、多くの場合「ちょっと確認しますね」と言われて待たされることになります。

ですが、セルフサービスのような革新的な技術の導入により、待つ時間は減ってきました。小包はモバイル上で場所と時間を指定できるようになりました。衣類や小型家電、電子機器、チケットはインターネットで購入できます。銀行支店に赴くことなく、スマートフォンで預金したり、ATMでお金を引き出したり、オンラインで残高を確認できます。サービス指向の企業は、プロセスを合理化し、セルフサービスによって利用可能なオファーの数を増やしてきました。通話によるカスタマーサービスであっても、フレンドリーなコールバックオプションを提供しています。

相互につながるカスタマーサービス: 新しいアプローチ

近い将来、企業の製品開発から消費者の利用までを一つのフローにした、新しいビジネスモデルが採り入れられようとしています。

どういう意味かと言いますと、従来キャッチボールのように企業と顧客が行なっていたやり取りを、同じプラットフォーム上で共有してしまえ!ということ。

例えば、保険の申し込み。

今は保険会社と申し込み希望者の「間」で申し込み書などの書類がやり取りされ、書類に不備があると、保険会社から申し込み者に再送されて、、、と行ったやり取りが申し込み完了まで繰り返されます。

結果として申し込みから契約完了までの時間がかかってしまっています。

でもこれが、共通のプラットフォーム上でリアルタイムに企業と顧客が「作業」できたとしたら、どれほどの時間が短縮できることか!

イメージとしては、ドキュメントをオンラインで共同編集するようなイメージです。

それが可能になれば、重要な情報は常に共有されることになります。

加えて、そこにAIを活用した自動プロセスが加わるとなれば、企業と顧客のコミュニケーションを根底から変える可能性もあります。

このような「デジタルエコシステム」が実現すると、消費者の生活は変わります。商品やサービスを購入後、金融アプリは未払いの請求書を自動的にお知らせしてくれます。こちらが何もすることなく、商品のお届け日はデジタルカレンダーに記録され、追跡番号やメールのやり取りで返品や保証を自動的に管理できます。

さらに、バックグランドでは、CRMや会計、商品管理のワークフローを設定するプロセスを開始します。プロセスに関連するすべてを顧客に通知することで、確実にコミュニケーションロスを防げます。

投資の必要性

これら新しい付加価値のあるプロセスが実現されるには、企業と顧客がネットワーク化されなければなりません。製品やサービス、コミュニケーションやインセンティブに関するオファーを顧客のバリューシステムの前後関係に取り入れ、最終的に実現可能なデジタルエコシステムによってのみ、これは可能になります。

Retail Systems ResearchのNikki Bairdは最近、小売カスタマーサービスの混乱を引き起こす要因を指摘しました。彼の報告によると、モバイルでの買い物客をサポートするための、基礎構造への投資を必要としています。ITシステムは、様々なデバイス、機能にそれぞれ対応したインタラクションを実装する必要が生じてきます。アプリ上の顧客の操作を分析することで、買い物客に関連性の高いステータスを提供でき、管理者がトレンドと相互関係をリアルタイムに把握できるようになります。最新のAIとコンテンツ分析ソフトウェアを取り入れることにより、ITシステムはコンテンツやイベントを追跡でき、リアルタイムで即使用可能な情報をマネージャーに提供することができます。

顧客が前を行く

デジタル化が加速する中、消費者は、時代の流れについていけない企業を置き去りにしているようです。消費者は、モバイルデバイスを常に使用して、支払いや契約、製品比較のためのアプリなど、オンラインサービスの幅広い選択肢から通信方法の組みあわせを選べます。取引の簡素化が強く必要とされており、これにより小売業や金融サービス機関などがそのシステムを見直すことが促されています。

スマートなモバイルデバイスもしくはアプリは、書類や領収書をスキャンして、クラウド上で保管・管理することができます。それらデバイスは、ユーザーのために「考える」ことができ、決定を助け、日常業務を実行できます。

そのような環境を企業と消費者双方に提供して、顧客と企業のコミュニケーションを劇的に変える可能性をもつアプリがあります。

ドイツITyX社が提供しているFileeeなどのプラットフォームアプリは、悩みの種となる繰り返しが多いペーパーワークを管理する、無料アプリを提供します。そのサービスには、自動スキャンと文字や文書の保管が含まれています。もしかしたら、このアプローチによって、私たちの日常の待ち時間は大幅に減少することになるかもしれません。

もうカスタマーサービスの「行列」に並ばずに済む時が、すぐそこまで来ています。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事